母子鳥
羽をなくした 母子鳥
とぶにとべない 母子鳥
せまいねぐらに ひざよせて
天空眺めて 何思う
『NHKスペシャル 東日本大震災「震災4年 被災者1万人の声」』2015.3.8 放送の番組内で紹介された、被災者による詩。
忘れられない。
父を亡くしたあの日を思い出す。
私の父の死因は病気だったが、「○○で亡くなったほうが××で亡くなったのより不幸」、ということはあり得ない。
母とふたり、ぽん、とおいていかれたことに変わりはない。
むしろ、こんなふうに世間から注目されることもなく、悪者がいないので感情をぶつける相手もなく、自分たちを責めることすらできなかった。
当時はメンタルケアなどの概念すらなかった。放り出されたまま、誰からも拾ってもらえやしなかった。
もちろん、被災者を悪く言うつもりはない。ひがんでいるわけでもない。
だからこそ、
当時から今までの母と自分を、大変誇りに思っている。
へこたれず、ひねくれず、前を向いて励ましあい、それこそ、小さくて狭い家の中、膝をつきあわせるようにして生きてきた。
生死にかかわらず、肝心な人に「おいていかれる」状況などさほど珍しくもないと思う程度には強くなった。
けれど、
母子鳥の詩を、一生忘れないで生きていきたい。
現実問題として、あらゆる場所にいつも、母子鳥たちがいる。這い上がれない人々はいる。本人たちの力だけではどうにもならないことだってたくさんある。母と私はただ、ラッキーだっただけなのかもしれない。
自分にクリアできたことが相手になかなか難しい、できない、という時、イライラして余計なアドバイスをしたり、自分の経験を引き合いに出して焦らせたり失望させたりする人は意外に多いので、十分気を付けたい。